2004年アジア杯準決勝、奇跡の逆転勝利をもたらした宮本恒靖の独断 (4ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun
  • 甲斐啓二郎●撮影 photo by Kai Keijiro

 延長戦に入ると、玉田らスピードのある選手がバーレーンの守備陣を翻弄。延長前半の3分に、その玉田が勝ち越しゴールを決めた。

 その後、バーレーンの怒涛の反撃を受けて、何度も決定的なチャンスを作られた。しかし、どんな力が働いたのかわからないが、バーレーンのシュートが日本のゴールを割ることはなかった。

 4-3。日本は再び奇跡的な勝利を飾って、決勝進出を決めたのである。

 崖っぷちに立たされたヨルダン戦、苦難の戦いを強いられたバーレーン戦。2つの試合を終えて、宮本が見たものは、大会前とは異なる"成長したチーム"の姿だった。

「やっぱり、難しい試合を勝ち切ることで自信がついた。『絶対に負けない』って、チームみんながそう思っていたし、そう信じることができた。それと、先発メンバーとサブメンバーとの温度差がなくなった。

 最初は、温度差があるのは仕方がないんですよ。でも、勝っていくたびに、チームがひとつになっていった。そうして、苦しい試合でも『引っくり返すことができる』というポジティブな思考を持って戦えるようになるんです。それが、チームの成長かな。

 どういうイメージか? う~ん......初戦からバーレーン戦までは、こう(小さく)渦巻いていたものが、どんどん大きくなっていく感じですね」

 宮本は、ジーコ監督にも変化が感じられたという。

「みんなをモチベートするのは、(前任のフィリップ・)トルシエ監督がすごくうまかったんですけど、ジーコ監督も試合を重ねるごとに、選手の気持ちを盛り上げてくれるようになった。準決勝の試合前とか、情熱的なことを述べて(ジーコ監督が)持っている言葉の重みを感じました」

 選手個々の結びつきが堅固になり、日本代表は本当の"チーム"になった。

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