杉山氏が嘆く森保Jの低ボール支配率。6年前のU-17代表とは対照的だ (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

 その極めつけともいうべき試合を展開したのが、2013年U-17W杯に臨んだ吉武博文監督率いるU-17日本代表だった。グループリーグを3連勝。決勝トーナメント1回戦でスウェーデンに1-2で敗れたが、文字どおりの惜敗だった。日本サッカー史上、もっとも惜しい試合をひとつ挙げよと言われれば、この試合になる。圧倒的なボール支配をベースに相手陣内で攻め続ける、画期的で斬新、さらにいえば痛快なサッカーだった。

 このとき日本U-17代表が4試合を戦った舞台はこのシャルジャで、その記者席に腰を据えると、6年前の光景が脳裏に鮮やかに蘇るのだった。と同時に、目の前で展開されている記録的低支配率サッカーに対して、無性に腹が立った。

 森保監督は会見で、サウジをリスペクトする言葉を口にした。サウジのサッカーのよさに言及していたが、あの程度のサッカーにゲーム内容で劣ることに悔しさはないのか。

 自軍ゴール前に引いて構える森保ジャパンに対し、サウジは、引いて構える相手にどう対処するべきかという、従来の日本が抱えることの多かった問題に直面した。答えはサイド攻撃になるが、サウジはそれがまったくできなかった。トップにボールが収まる機会も少なかった。ボール回しは低い位置が大半で、一見うまそうに見えるが、怖さはなかった。真ん中に突っ込んでは日本にカットされた。

 しかし、それが日本のいいボールの奪い方にはつながらなかった。奪う位置が深すぎる(低すぎる)ので、逆襲につながらない。前線の堂安律(フローニンゲン)、南野拓実(ザルツブルク)、武藤嘉紀(ニューカッスル)も、頼りにならないプレーを繰り返した。シュート数5対15。日本に決定的なシーンはなかった。相手GKを泳がすシーンもなかった。チャンスらしいチャンスがほとんどない情けないサッカーをした。

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