女子サッカー3冠達成。ベレーザが追求する理想のスタイルは超難解だ (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 もちろん、三宅がしっかりとカバーに入り、リスクマネジメントも抜かりない。INACの守備がハマった前半は、得意のカウンター攻撃から増矢理花のゴールで先制する展開に持ち込んだ。

「ベレーザに対して1-0はリードじゃないと監督にも言われていましたし、後半はきっとペースを上げてくるからそれにひるんで下がらないように、後ろで1対1になったとしても思い切って行こうと話し合っていました」とは、何度も体を投げ出してベレーザの攻撃を防いでいた三宅だ。後半のベレーザのギアアップは想定済みだった。

 一方、ベレーザのロッカールームでは、誰一人焦っている選手はいなかった。

「前半でだいぶ相手を走らせたから、後半は(チャンスが)来るねっていう感じの雰囲気があった」。

 前半、右サイドで攻撃に絡めていなかった籾木結花はこう感じていた――。「後半で逆転できる」

 実際にそのとおりになり、後半のベレーザは、この1年で作り上げた引き出しから、最適な選択肢を全員で具現化しているようだった。ボールを受けられる選手がひとりいるだけでは、ベレーザが志向するスタイルは実行できない。2手3手先にボールがつながるように、全員がポジショニングを調整し続け、ピッチ上で選手が同じ絵を描いていく。それができたとき、ベレーザの攻撃は一気に速度が上がる。

 植木理子が決めたベレーザの同点弾が54分と後半の早い時間帯に入り、さらに、後半動きがスムーズになった籾木が勝ち越しゴール。これで勝負あったと思われたが、INACは皇后杯で調子を上げてきていた京川舞の豪快なゴールで同点に追いつく。ラスト10分の攻防は実に見応えがあった。

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