森保Jに欠かせぬ32歳。気負わない青山敏弘の「ベテラン力」 (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by AFLO

 得点を量産していたパトリックが警戒され、躍進を支えていた堅守もシーズンが進むにつれてその強度が失われていく。結果を出せなくなったため修正を試みたが、一度狂った歯車は元に戻ることはなかった。

 もちろん、前年15位だったチームが優勝争いを演じたことは、称えられるべきことだろう。

「思い描いた以上の成績だったわけだからね。どっちに転ぶかわからないリーグで2位になれたことは、すごく評価していいと思う」

 とはいえ、世間の評価は残酷だ。広島の2018年は「躍進」ではなく、「失速」というネガティブなイメージが色濃いだろう。ただし、青山はこの1年を無駄には思っていない。

「チームが変わって、いいところもあったし、悪いところもあった。でも今は、それがよかったかなと思える。それぞれがどう関わって新しいチームを作っていくか。その覚悟ができたと思うので」

 来季に向けて、不安がないわけではない。クラブのレジェンドである森﨑和幸が引退し、三度の優勝に大きく貢献した同世代の千葉和彦が名古屋グランパスに新天地を求めた。

「それは、しょうがないよね。チームが新しいスタイルに舵を切ったから、価値観も変わってくる。ただ、選手がいなくなった分、若い子たちが出てくればいい。今年はあまり出られなかった(川辺)駿とか、(仙台からレンタルバックする)野津田(岳人)とかがバリバリ出ていけば、何の問題もない」

 ベテランが抜け、来季の広島は間違いなく過渡期を迎えるだろう。その分、キャプテンを務める青山の負担はますます大きくなるはずだ。その質問をぶつけると、青山は達観した表情で答えた。

「そうなっていいんじゃないですかね」

 そこには、覚悟の響きが備わっていた。

 個人に目を向けても、今年の青山は浮き沈みが激しかった。5月、監督交代を機に、ほとんど頭になかったというワールドカップのメンバー候補に選出された。しかし、選出直後に負傷によって辞退。ロシアの地に立つことができず、4年前のブラジルのリベンジを果たすことはできなかった。

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