28年ぶりの快挙に沸く日本。前園真聖はアトランタ五輪で何を学んだか (3ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun
  • 甲斐啓二郎●撮影 photo by Kai keijiro

 帰国して以降、前園のプレーは常に注目されて、さらにプレー以外の私生活の部分にまで興味が注がれるようになっていった。テレビCMに抜擢され、サッカーファンだけでなく、世間一般の人にも認知されると、写真週刊誌などにも、しつこく追いかけられた。

 気持ちが休まる時間や場所が激減し、前園のプライバシーはもはやないに等しい状況にあった。

「ピッチ上はともかく、ピッチを離れたときに、好奇の目というか、みんなの視線の変化を感じたね。(自分のことを)知ってもらうのはうれしいけど、普段からじろじろ見られたり、週刊誌に追い回されたりするのは、すごく嫌だった。

 それに、自分の発言が、言ったことをそのまま正確に伝えられることなく、自分の意図とは違う形で伝えられたりもした。しかも、その発言の影響力がどんどん大きくなっていく......。それでちょっと、自分の"見せ方"がよくわからなくなった。自分で自分を守るために、メディアと距離を置こうと思ったんです」

 空前の"前園ブーム"は、アトランタ五輪本大会が始まっても続いていた。いや、一層大きくなっていたと言ってもいいかもしれない。

 キャプテンであったため、発言を求められたり、注目されたりするのは仕方がない。ただそれが、前園自身が受け入れられる、許容範囲を超えていた。

 それまでに、サッカー選手が単独でこれだけ脚光を浴びたのは、おそらくカズ(三浦知良)だけである。前園は、カズの気持ちが理解できたのだろうか。

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