日本中が熱狂した「マイアミの奇跡」で前園真聖が感じたこと (3ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun
  • 甲斐啓二郎●撮影 photo by Kai keijiro

 一方で守備陣の選手たちは、前園をはじめ、城彰二、中田英寿ら前線の熱い思いを理解しながらも、務めて冷静で、西野監督の考えも素直に受け入れていた。

「ハット(服部年宏)とか(川口)能活とかは(自分の訴えに)反対していたね。俺らの思いはわかるけど、『相手はブラジルだぞ』って。

 たしかに(自分も)スカウティングのビデオを見て、(ブラジルは)『強すぎる』と思った。普通に戦っても、押し込まれる時間が長くなるだろうな、と。それは、自分も納得していた。

 だからといって、最初から守備的にするのはどうかなって、思っていた。だから、攻撃に入ったときは『みんなで攻めようよ』っていう話をしたんだけど......。(みんなの)同意を得るのは難しかった」

 前園の気持ちとは裏腹に、チームは対ブラジルに向けての策を、実践的な練習の中で浸透させていった。

 ベベットには鈴木秀人がつき、サヴィオは松田直樹がマークした。ゲームを組み立てる中盤のジュニーニョについては、守備力のある服部がマンマークで対応することになった。そのため、ボランチのレギュラーだった廣長優志がスタメンから外れた。

 ブラジルの長所を完全に潰す作戦に、守備的な作戦を支持していた服部でさえ「ここまでやるのか」と驚いたという。

 守備面の整理が進んでいくなか、攻撃面についてはほとんど手つかず、だった。守備陣が体を張って必死に守り、攻撃は前線の前園、城、中田の3人で何とかするしかないのだが、それぞれが孤立しては何もできない。ブラジル相手では、単独で突破して決定機を作れるはずもなかった。

 活路を見出すとすれば、セットプレーか、カウンターか。ブラジルのセンターバック、アウダイールとロナウドはともにスピードがない。大会直前にコンビを組んだ"急造ペア"ということもあって、連係に難があり、「背後を突けば、チャンスがある」ということは、ミーティングで西野監督から選手たちに告げられていた。

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