森保Jの布陣は変化するか。2つの顔を見せたキルギス戦で残った疑問 (2ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi 益田佑一●撮影 photo by Masuda Yuichi

 とはいえ、この試合にはスタッツだけでは判断できない部分があったことも見逃せない。キルギスも日本も、90分間でまったく異なる"2つの顔"を見せたからである。

 試合後の会見で「前半は慎重になりすぎたのでは?」と問われたのは、キルギス代表を率いながら、ドルドイの監督も兼任するロシア人アレクサンデル・クレスティニン監督だ。すると指揮官は「アウェーではいつもこのパターン。ホームではまったく違った試合になる」と端的に答えたが、確かにこの試合のキルギスは前半と後半で別チームのようなパフォーマンスを見せた。

 まず、キルギスの布陣は5-4-1。日本をリスペクトして守備的な布陣を選択したが、キックオフ直後を見る限りでは、自陣ペナルティエリア前で"ベタ引き"して守ろうというスタンスはうかがえず、可能な限りラインを上げて守りたいという意図が見て取れた。

 ただし、3万人以上の超アウェーの雰囲気に緊張したのか、地に足がついていない状態の立ち上がりに失点。結局は"ベタ引き"の状態で日本の攻撃を受ける格好になってしまう。

 試合後にクレスティニン監督が「我々が持っていた日本の情報(分析)は正しかったが、(日本に)情報(分析)どおりのプレーをそのまま許してしまった。試合前には違ったプランがあった」と語った真意はそこにあった。

 そこでキルギスは、ハーフタイムに2人を入れ替えることで、布陣を変えずに修正。すでに前半35分に左サイドバックの5番を下げて右サイドバックに14番を投入し、右サイドバックの2番が左サイドバックにポジションを変えて対応していたが、さらに後半開始から2列目の両サイドにフレッシュな22番と8番を入れ、中盤左サイドの15番を右ボランチに移動させることで守備の安定化を図った。

 もちろんそれらの交代策がすべてではないが、少なくとも前半で日本の速いテンポのサッカーに慣れたキルギスは、前半よりも前でディフェンスすることができるようになり、ようやくFIFAランキング90位の実力の片鱗を見せ始める。

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