ベネズエラ戦分析。中盤からの「縦パス」が森保Jのバロメーター (4ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi スエイシナオヨシ●撮影 photo by Sueishi Naoyoshi

 過去3試合を見ても、ボランチからの縦パスが森保ジャパンのバロメーターであることを考えると、日本がこの時間帯でいかに苦しんでいたのかがよくわかる。

 逆に、吉田麻也(サウサンプトン)のフィードから南野がディフェンスラインの裏に抜け出た30分のチャンスを契機に、日本はリズムを取り戻した。それまで影を潜めていた遠藤の縦パスも、2分間で3度も大迫に入れることに成功し、そのうち2度は南野のヘディングシュート(32分)、そして中島が大迫からのスルーパスを受けてGKと1対1の場面を迎えたシーン(34分)と、シュートチャンスにつながった攻撃の起点となっていた。

 39分にセットプレーから生まれた酒井の代表初ゴールは、そんな日本ペースの中で生まれた必然の先制点だったと言っていいだろう。

 1-0で迎えた後半も、基本的には試合の構図は前半を踏襲するものだった。親善試合ではよくあることだが、選手交代が行われる度にお互いの戦術が乱れ始め、最後はやや大味で見所が少なくなってしまったことは否めない。

 最終的には、81分に酒井がPKを与えてベネズエラが同点に追いつくこととなったわけだが、両チームの出来からすれば1-1は妥当な結果だったと言えるだろう。

 ただ、そんななかで気になったのは、この試合では日本が攻撃時に3バックに可変するシーンがほとんど見られなかった点だった。前半途中に一度3‐4-2-1の形になったシーンもあったので、おそらくその意識はあったと思われるが、その場面も相手の圧力に屈してボールを下げてしまったことで、あっさりと4バックに戻している。

 10月の2試合では、マイボール時にボランチがセンターバックの間に落ちて3-4-2-1に可変するパターンと(パナマ戦)、右サイドバックの酒井が上がって、最終ライン全体が右にスライドして可変するパターンで(ウルグアイ戦)、攻撃にバリエーションを増すことができていたが、結局、この試合ではベネズエラの守備にそれを封じられる格好となってしまったことになる。

 もちろん、相手の出方を見て選手たちが臨機応変にベターな判断をしたとも言えるが、しかしその一方で、とくにこの試合では堂安と中島の両ウイングが中間ポジションをとることが多かったため、日本の攻撃が中央に偏りすぎるというよくない現象が起きてしまったことは、課題として挙げておくべきだろう。

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