ベネズエラ戦分析。中盤からの「縦パス」が森保Jのバロメーター (2ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi スエイシナオヨシ●撮影 photo by Sueishi Naoyoshi

 とはいえ、かつて南米最弱国と揶揄された時代とは異なり、アンダー世代を中心に近年における彼らの成長ぶりは目を見張るものがある。実際、2016年から指揮を執るラファエル・ドゥダメル監督率いる現在のチームはFIFAランキングでも29位。50位の日本から見れば明らかな格上だ。

 そのチームを率いる指揮官が試合後の会見で「日本はつねに一定のコンディションを保って攻撃するが、我々は何とかそれを無効にしようとし、1列目の選手にロングボールを入れることで日本がやりづらいプレーを強いることを目指した」と語ったとおり、この日のベネズエラは実に綿密な日本対策を以って試合に臨んでいた。

 そこが、日本対策をしていなかったウルグアイとの試合と大きく違う点であり、日本がベネズエラに苦戦した要因のひとつでもあった。デュエルと攻守の切り替えが繰り返されたスピーディな展開だったのがウルグアイ戦だとすれば、このベネズエラ戦は両チームがセットした状態でお互いに見合う局面が多く、より戦術的な試合だったと言える。

 ドゥダメル監督が用意した日本対策とは、まず会見でも触れていた「ロングボールを入れる」ことで日本のディフェンスラインを下げさせ、全体を間延びさせることがひとつ。そして、それ以上に重要なポイントになっていたのが、森保ジャパンの攻撃の起点、とくにダブルボランチからの縦パス供給を封じることだった。

 これまで4-4-2もしくは4-2-3-1を基本システムにしていたベネズエラが、敢えてこの試合で4-3-3を採用したその狙いは、キックオフ直後から見て取れた。

 日本が最終ラインからのビルドアップを図る際、ベネズエラは両インサイドハーフのフニオル・モレノとジャンヘル・エレラが猛然と前に出て、それぞれ遠藤航(シント・トロイデン)と柴崎岳(ヘタフェ)に素早く寄せる。しかも全体が4-1-4-1のかたちでプレスをかけてくるため、日本にとっては前方に効果的なパス供給をできない状況が続いた。

 そんななかで日本が頻繁に見せたのが、GKシュミット・ダニエル(ベガルタ仙台)を使ったビルドアップでプレスを回避するという方法だった。

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