高倉監督にも手応え。なでしこジャパンの変化は着実に実を結んでいる (4ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 2018年のなでしこジャパンを文字で表すなら『耐』。3月のアルガルベカップの初戦でオランダに6失点し、危機感満載でスタートした1年だった。今思えば、この敗戦からこのチームは変わった。指揮官の意向と目まぐるしく入れ替わる新戦力を一歩引いた目線で静観していたベテラン組が動いたのだ。とにかく話し合った。映像も何度も見返した。ポジションごとの話し合いは最大限の最優先。その結果、簡単に失点を許していた守備にも"忍耐力"がついた。

 高倉ジャパンのカラーはその多彩な攻撃力。しかし、形は作れても肝心のゴールはなかなか生まれず、多彩な攻撃陣がウリのチームでありながら常に"決定力不足"が課題に上がっていた。相手の攻撃を耐えながら、じっくりとゴールが生まれる一瞬を探る。決して楽な戦い方ではないが、現状における最良の戦い方で4月のAFC女子アジアカップを制した。

 8月のアジア大会では、熊谷、宇津木、川澄奈穂美(シアトル・レインFC)ら海外組不在に加え、直前で得点源の一人である横山が離脱という苦しい選手事情のなか、多くの選手が本来の持ち場以外のポジションにトライし、苦境を耐え凌いだ末に今シーズン2つ目となるアジアタイトルを獲得した。

 この1年苦しみ抜いた末に得たあらゆるものが、このノルウェー戦のそこかしこに散りばめられていた。守備の連動の向上は複数枚のカバーリングに表れた。市瀬菜々(ベガルタ仙台L)のアクシデントによる交代時には、この1年挑戦しつづけていたCBに鮫島彩(INAC神戸)が違和感なくスライドして対応してみせた。

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