痛快さを抱かせる安部裕葵。日本にもこんなに面白い19歳がいる (4ページ目)

  • 杉山茂樹●取材・文 text by Sugiyama Shigeki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 先のACLvs水原三星では、気がつけば真ん中に進入。自らもチームもバランスを崩すことになった。その結果、後半11分、安部はサイドアタッカーである安西幸輝と交代を余儀なくされた。

「内側でプレーすることが多くなった安部が、そこでプレッシャーを浴びていたので、サイドが本職の安西を投入した」とは、大岩監督のコメントだ。1-2だったスコアは、終わってみれば3-2に。鹿島はこの試合、逆転勝ちに成功した。

 トップ下、すなわち真ん中周辺にしか適性がない選手、プレーの幅が狭い選手、ポジションの選択肢が少ない選手は、現代サッカーにおいては辛い立場に置かれる。出場機会は減る。

 香川真司(ドルトムント/ドイツ)がいい例だ。真ん中でのプレーを好む一方で、サイドでのプレーを不得手とする。サイドで出場しても、気がつけば真ん中に入り、ポジションのカバーを怠る。

 トップ下は、必ず存在するポジションではない。4-2-3-1には存在するが、4-4-2や4-3-3には存在しない。そうした背景を踏まえると、大岩監督が安部をサイドハーフで起用することに納得がいく。親心を感じる。

 選手の特性は、真ん中か、サイドかに加えて、MFか、FWかでも分類される。抽象的に言えばアタッカーだが、FW的なのか、MF的なのかで"商品"としての価値に大きな差が生まれる。価値が高いのが、FWであることは言うまでもない。

 4-4-2のサイドハーフは、文字どおりMF。4-2-4に近い4-4-2ならともかく、鹿島の安部はあくまでも4-4-2のMFだ。

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