痛快さを抱かせる安部裕葵。日本にもこんなに面白い19歳がいる (3ページ目)

  • 杉山茂樹●取材・文 text by Sugiyama Shigeki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 しかし、プレーは右肩上がりの一途を辿っているのかといえば、必ずしもそうではない。にもかかわらず、スタメン出場の機会は増している。ここがミソだ。

 今季、鹿島で任されているポジションは、主に4-4-2の左サイドハーフだ。しかし安部は、「高校時代までずっとトップ下でした。ボランチもやりましたが、サイドでプレーした経験はない」とのこと。慣れないポジションで奮闘しているわけだ。

 鹿島というチームは、監督が誰であろうと、伝統的にほぼ4-4-2しか使わない。いわゆるアタッカーのポジション的な選択肢は、サイドハーフか、2トップの一角かに限られる。4-2-3-1の1トップ下は存在しない。土居聖真が2トップの一角として出場すれば、それに近い役回りを果たすことになるが、彼を1トップ下の選手とは言わない。

 次に似合いそうな4-3-3のインサイドハーフも、鹿島には存在しない。安部は真ん中でプレーをしにくい環境に置かれている。真ん中しかできない選手にとって、これは試練だ。

 安部をスタメンで起用する大岩剛監督も、彼にとってサイドハーフが適役ではないことを認めている。チーム事情に基づき仕方なく、とのことらしいが、「ディフェンスのトレーニングにはなる。長い目で見たら、必要なこと」とのこと。

 育てながら使っている。対峙する相手サイドバックの攻め上がりに蓋をする作業。これを毎回行なうことは、トップ下の選手には積めない経験だ。

 とはいっても、随所に居心地の悪そうな素振りを見せる安部。少なくとも現在、左サイドでボールを受けても、本来備えている魅力を存分に発揮できているとは言い難い。

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