2018.09.21

福田正博は大島僚太を代表の中核に推す。
「1本のパスで全員を動かす」

  • 津金壱郎●構成 text by Tsugane Ichiro
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 視野の確保がうまい選手は、たとえば、自分の右からきたパスを受けるときに、ボールを自分の体の前を通して逆サイドの左足で止める。これはパスが出てきた側の足でコントロールすると、体の向きがパスの出てきた方向にしか向かなくなり、次のパスは同サイドになってしまうし、逆サイドに展開しようとすると、そのために体の向きを変えなくてはならず、テンポが悪くなってしまうことを避けるためだ。

 しかし、右から来たボールを体の前を通して左足でコントロールすると、体が開いて視野は広がる。トラップひとつの違いで、視野の角度と選択肢が広がるのだが、こうしたボールの受け方ができる中盤の選手は、Jリーグではイニエスタや大島のほか、わずかしかいない。しかも、彼らはこうした高いスキルを要するプレーを自然にさり気なくやるので、注意して見ていないと気づかない。

 ちなみに、大島やイニエスタのようなスキルの高い選手の共通項は、「広い視野の確保」のほかに、「バックステップが踏める」「いいタイミングで止まる」「ゴール前でスピードの緩急をつける」ことがある。

バックステップを踏めれば、体の向きをゴール方向に向けたまま視野を維持できるが、バックステップを踏まずに横を向いて斜め後ろに動くと、視野が狭くなってしまい、トラップしても次のプレーの選択肢が少なくなってしまう。

 また、敵を引き離そうとするとまずはスピードを上げるケースが多いが、実は、マーカーにとって対応が厄介なのは、マークから逃れるために動くのではなく、その反対の「止まる」選手。マーカーにすれば相手が止まれば自分も止まるのだが、うまい選手はマーカーが止まった瞬間にすぐ動き出して、ほんの一瞬フリーになり、そこでパスをもらう。

 そして、ゴールが狙えるチャンスで、多くの選手はゴールに向かうスピードを上げていくが、スピードが上がれば、パスに合わせるのも、ボールをコントロールすることも難しくなる。そこで、スピードを上げてスペースを突くだけではなく、あえてスピードを落とし、その緩急によってゴール前にわずかなスペースをつくってチャンスに結び付けることもできる。

 言葉にすると簡単なように思えるが、試合で実践しようとすると、高い技術力と正確な状況判断が必要になる。当然ながら大島は、こうしたスキルでも卓越したものを見せているからこそ、川崎で別格の輝きを放っているのだ。