初陣勝利も森保監督の過大評価は禁物。コスタリカ戦を冷静に細かく分析 (2ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 そんななかで迎えたこの試合は、立ち上がりこそ日本ペースで展開したが、8分の南野拓実(ザルツブルク)のシュートシーンの後から、コスタリカの前線からの守備が機能し始めた。そこには、2トップが日本のセンターバック2枚にプレッシャーをかけ、トップ下の22番(ランドール・リール)とボランチの20番(ダビド・グズマン)が青山敏弘(サンフレッチェ広島)と遠藤航(シント・トロイデン)に厳しく寄せて、日本のビルドアップの起点を潰してしまおうという狙いが垣間見えた。

 そこからしばらくは日本が苦戦する時間帯が続いたが、その中で浮き彫りになった現象は主に3つあった。

 ひとつは、ボランチの青山と遠藤が得意とする縦パスが影を潜めたこと。それでも2人は何度か縦パスを狙ったが、たとえば14分の青山から南野へのくさびはカットされ、26分の遠藤の小林悠(川崎フロンターレ)を狙った縦パスはオフサイドに、また27分の青山の縦パスが相手に渡ってしまうなど、2人が起点となることはほとんどできない状態に陥った。

 2つ目は、ボランチが機能しないために、DFラインからのロングキックによってコスタリカのプレスを回避するシーンが増加したこと。そこにはDFライン4人の特徴も現れていて、左SBの佐々木翔(サンフレッチェ広島)と右CBの三浦弦太(ガンバ大阪)が安全な場所にパスすることでプレッシャーを逃れるため、主に左CB槙野智章(浦和レッズ)と右SBの室屋成(FC東京)がクリアに近いロングフィードを頻繁に蹴っている。ちなみに、GK東口順昭(ガンバ大阪)のロングキックも頻発していた。

 そして3つ目の現象が、ロングフィードが増えたことによって、両SBが攻め上がれない状態が続いたことだった。本来であれば、両サイドに2人を配置する布陣の日本は、1人しかいないコスタリカよりもサイドで優位な立場にあるはずなのだが、中盤を省略するために両SBが上がるタイミングが失われることになった。

 前半、日本の両SBが敵陣深い位置まで攻め上がってクロスを試みたのは、日本ペースだった立ち上がり7分の室屋のクロスが相手DFにブロックされてコーナーキックになったシーンと、同じく14分に室屋のクロスが相手GKにキャッチされたシーンのみ。佐々木に至っては、20分に中島翔哉(ポルティモネンセ)のスルーパスで好機を得たものの、相手が寄せてきたことですぐに中島に長いバックパスを戻してチャンスを無にしてしまった。

 また、日本の両サイドMFの中島と堂安律(フローニンゲン)がサイドに張って縦突破を図るタイプではないため、実質的に布陣は4-2-2-2に近い時間が多くなり、その結果、相手の両ウイングバックの位置取りも高くなった。これも、コスタリカの前線からのプレスがハマりやすくなった要因のひとつとなった。これでは、4-4-2を採用した狙いも台無しである。

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