中村俊輔の後継者が代表デビュー。天野純は「爪痕」を残せたのか (2ページ目)

  • 井川洋一●文 text by Igawa Yoichi photo by Fujita Masato

 天野の刺激的な日々は9月3日から始まった。森保一新監督の初陣を担う代表メンバーは8月30日に発表されたが、その後に山口蛍(セレッソ大坂)と大島僚太(川崎フロンターレ)が負傷したため、天野と守田英正(川崎フロンターレ)が追加招集されたのだ。

 初招集ながら、年齢は上から数えた方が早い。それでも、初めて経験した代表合宿には「刺激しかなかった」と言う。

「わりと年齢の近い選手も多いし、槙野(智章/浦和レッズ)くんが盛り上げてくれるので、助かっています。最初はちょっと緊張したけど、徐々に慣れていきましたね」

 合宿の4日目の早朝には、地震が合宿地の札幌を襲った。新千歳空港へ発着するフライトがすべて欠航となり、翌日に予定されていたチリとの試合もキャンセル。予期せぬアクシデントにチームと彼はどう対処したのだろうか。

「幸いにも、僕らが泊まっていたホテルは電気がついたので、それほど不便は感じませんでした。ただ外を散歩したりすると、救急車の音がずっと鳴っていたりして、被害の大きさが感じられました。次の日の練習と紅白戦には、多くのファンの方が見にきてくれたので、うれしかったですね」

 その紅白戦では、天野のスルーパスが起点となり、佐々木翔(サンフレッチェ広島)の折り返しから伊東純也(柏レイソル)のこの試合唯一のゴールが生まれた。現在の日本代表にはスピードとテクニックのあるアタッカーが多く、「パスを出しやすい」と天野は言う。逆に言えば、今回の代表には彼のように柔らかく正確なパスが出せる選手は少なく、その価値は高い。

 加えて彼には、今季からマリノスの指揮を執るアンジェ・ポステコグルー監督の教えも身についている。その最たるものは、「ターンする技術」だ。

「ボールを受けて前を向く。簡単ではないですけど、今のマリノスでは、これをやらないと怒られます。そこは今季のクラブで大きく成長できたところだと思うので、違いを出せるようになっているのかなと。あの感覚を身につけられて、本当に助かっています」

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