日本代表から離脱する時、青山敏弘の心に刺さった岡崎慎司の言葉 (3ページ目)

  • 飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

―― 今のひざの状態は?

青山 すごくよくなりました。手術はせず、できる範囲のことをやって、それがうまくいったので、まったく問題ないです。でも、逆に、ちょっと難しいんですよね。

―― というのは?

青山 よくなったから、もっといいプレーをしたいとか、欲が出てくるんですよ。今まではひざが悪いから割り切って、シンプルに、自分ができることだけをやって、いい意味で周りに任せるところは任せて、それがチームとしてうまくいっていたのに、今は自分が狙う部分が出てきてしまって。

―― その欲を抑えるのが大変?

青山 大変です。違う、違うって。今までやってきたことを確認しながら、周りに任せながらやらなきゃいけないって。

―― 代表から離脱した2日後に、サンフレッチェ広島のファン感謝デーに登場して、ファン・サポーターに笑顔を見せたでしょう。メディアにも対応したと聞いて、すごいなと思ったんです。みんな心配していたと思うから、あの笑顔に救われたファン・サポーターは多いと思うけど、一方で、ホッとした気持ちも抱えていたとは......。

青山 代表に合流した日、みんなと一緒にいられたのは食事の時間の30分くらいだけだったんですよ。検査から戻ってきて、練習の準備をしている選手たち、廊下で会った選手たちに「俺、離脱するわ」って伝えて。

 ブラジル(ワールドカップ)で一緒に戦った岡ちゃん(岡崎慎司)にも伝えたんです。岡ちゃんも足首を傷めていたから、「足首、あんまり無理せず、がんばってよ」って言ったら、岡ちゃんが「ここは無理するとこだよ」って、食ってかかるように返してきたんです。その瞬間、ああ、自分はワールドカップに対する考え方が甘かったんだなって。今の自分が来る場所じゃなかったなって。岡ちゃんのひと言で吹っ切れたんです。

―― ワールドカップを戦ううえでの覚悟を、岡崎選手に見せつけられた。

青山 そうですね。日本代表に対して、彼らにはそれだけの想いがあったけど、自分にはなかったんだなって......。

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