鮫島彩はアメリカに大敗で違いを実感。それでも微かな希望の光を見た (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 両サイドに早めにプレスに入り、そのサポートも最大限にギアを上げて臨んでいた。ラインコントロールもあの状況下で手放すことはしなかった結果、オフサイドを取ることもできていた。アメリカが容易(たやす)く奪ったように見える4得点も、他国であればゴールに結びついたかは疑問だ。そこにアメリカの強さがあるのだと鮫島は言う。

 対応できていた時間帯ももちろんあった。だからこそ、"4失点で済んだ"とも言える。その一因として、サイドバックデビューの阪口の光るプレーがあった。阪口に課せられた使命はアメリカの強烈なスピードを落とさせること。奪えなくていい。あくまでも安易にサイドのスペースを使わせないベターな策であり、今の日本にできるベストな策でもあった。

 その阪口がマッチアップしたプレスを抑え込んだのだ。「そこまでやられている感じはなかった」と、何が正解か分からないながらも手応えはあった。鮫島のラインコントロールにもしっかりとついていき、モーガンにつく鮫島のこぼれ球をカバーする動きも見せた。生まれたてのサイドバックが、右サイドからのクロスをほぼ封じていたのだ。

 だが、54分に満を持して登場したトビン・ヒースが厄介だった。彼女の恐ろしさはこれまでサイドバックとして、そのスピードを受けてきた鮫島の体に叩き込まれている。投入された直後、ヒースはあっさりと仕事をやってのけた。ドリブルで一気に右サイドを駆け上がる。一度は抜かれた阪口も何とかコーナー前で足止めするまで粘り続けた。右に左に駆け引きを繰り返すヒースが選んだコースは、狭いライン際からのクロス。それをモーガンに決められた。

 阪口にしてみれば、スピードを落とさせるという使命は果たしている。そこからの駆け引きで完全に経験値の差が露呈した。しかし、それはそのまま今後の期待値に置き換えられるだろう。この失点後も阪口なりに調整をし、近づき過ぎず相手のスピードを殺す動きを自然に見出し、わずかではあるが成功例も手にし、失敗の中から成功のピースを拾っていた。

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