森保ジャパンの方向性は見えず。代表監督就任記者会見への違和感 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki 高橋学●写真 photo by Takahashi Manabu

 田嶋会長は、何人かが日本代表監督に自薦してきたことをほのめかしていた。技術委員会の中で、別の人物の名前が挙がったとも述べている。それなりに考察を重ね、手続きを踏んだ末の結論であることを暗にアピールしたが、時間的に見ても、議論が尽くされたとは言い難い。"森保ありき"で始めから動いていたことが想像される。

 それにしても、だ。森保監督はA代表と五輪チーム(U-21代表)との兼任だ。それぞれ、試合や強化のスケジュールが重なることが予想される。身体ひとつでは足りない。となれば、腹心の部下ではないが、助監督クラスの存在はもちろん、優秀なコーチングスタッフを揃えていないと始まらない。監督ひとりを決めただけでは、門出にはならない。

 外国人監督は、就任に際し、コーチングスタッフの要求を突きつける。これまでの外国人代表監督も、自分の息のかかったコーチ数人を連れ立って来日した。契約はコーチ込みだ。

 それが今回は、兼任監督であるにもかかわらず、助監督どころか、スタッフの顔ぶれもまったく決まっていない。サポート態勢は白紙だ。決まっているのは、森保氏が代表監督に就任するというほぼ一点だけ。なぜそんな不完全な状態で、大慌てで会見を開くのか。

 森保氏は「即決した」そうだが、よくそんな段階で、代表監督を引き受けたものだ。とはいえ、壇上では「ふたつのチームを見ていくことは本当に大変なこと。不可能なことかもしれません。ですが、日本代表を支えてくれる人のお力を借りることができれば、不可能は可能に変わり......」と、お公家さんのようなのんびりしたことを言っている。

 全体として、その就任スピーチは丁寧で、そして長かった。その大半を費やしたのが「感謝」だった。少年時代、高校時代、日本リーグ時代、Jリーグ時代、日本代表時代、そしてその後、指導者になってから、どれほどの人に世話になったか、その感謝と覚悟の気持ちを忘れずに、職責を全うしていきたい......等々。

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