第二の乾貴士は日本で育つか。独善的ドリブラーに必要な評価と強化 (2ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 とはいえ、ロシアで際立つ活躍を見せた乾も、それまでの日本代表では、主力でもなければ、常連でもなかった。

 さらに時計の針を巻き戻しても、横浜F・マリノス、セレッソ大阪を経て、2011年にヨーロッパへと戦いの舞台を移した乾だが、Jリーグでプレーしていたときでさえ、同じセレッソから海を渡った香川真司や清武弘嗣とは違い、本当の意味でJリーグのトップ・オブ・トップの選手ではなかったのだ。

 そんな乾が、今ではラ・リーガで最も大きな成功を収めた日本人選手となり、ワールドカップでも世界を驚かせるプレーを見せたのである。日本でくすぶっていた才能が、海の向こうの"別の価値観を持つ国"で開花したといってもいいのかもしれない。

 日本ではパス重視の傾向が強まった結果、若い選手に個性がなくなったといわれる昨今、日本で完全には評価されていなかった才能が、スペインを経て、ワールドカップの舞台で開花したというサクセスストーリーは、非常に魅力的に聞こえる。今回、乾がクローズアップされたことで、「やはり自分で仕掛けられる選手が日本にも必要。乾のようなドリブラーを育てなければならない」といった声は、確実に高まるだろう。

 しかし、そもそも乾に才能があったのは事実だとしても、日本にいた当時の彼に足りないものがあったことも確かだ。

 例えば、ドリブルで縦に仕掛けるにしても、かつての乾は"やりっぱなし"。やりたいことをやるだけで、ボールを奪われても守備への切り替えは遅く、下手をすれば逆襲を喰うのがオチだった。守備のときにしても、何となくプレーしている印象が強かった。

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