脱ハリルの日本スタイル。過去に
W杯で見せたどの試合よりも痛快だった

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 もちろん、ワールドカップ2カ月前の監督交代という、ある種のショック療法が選手に意識変化をもたらしたことはプラスに作用しただろう。

「監督が選手の自主性(を尊重する)というか、選手と一緒に作っていくという形を取ったことで、(選手は)自分たちがやらなきゃという気持ちが芽生えた」

 長谷部がそう語るように、選手の中に生まれた危機感は、間違いなくチームを強くした。

 しかし、意識が変わったからと言って、急にボール扱いがうまくはならないし、どこでどう動けばいいかが判断できるようにもならない。技術的にも戦術的にも、日本サッカーがこれまでに築き上げてきたベースがあったからこその結果である。

 最終的なボールポゼッション率は、ベルギーの56%に対し、日本は44%。後半早々に日本が2点のリードを奪ったことで、その後はベルギーが必死で猛攻を仕掛ける展開が続いたことを考慮すれば、ほぼ互角と言っていい数字である。

 ベルギーのゴールネットを揺らした2本のシュートに関して言えば、出来すぎだったかもしれない。しかし、そこに至る過程については、何も特別なことはしていない。日本で日常的に行なわれているサッカー、すなわち、前任の監督が決して認めようとしなかった日本のスタイルを貫いて、優勝候補相手にこれだけの試合ができたことの意味は大きい。

 もちろん、改善すべき点、もっと伸ばさなければいけない点は数多くある。

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る