川口能活が語る南アW杯。
レギュラー剥奪された選手もグッとこらえた

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 だが、岡田監督は自信ありげにこう言い返した。

「そうか。でも、俺は手応えを感じているんだよね」

 合宿地のスイスにいたときとはまるで違う岡田監督の表情を見て、川口は驚いた。岡田監督は何か達観したような、落ち着いた表情をしていたのだ。

「スイスでメンバーを切り替えた時点では、選手の組み合わせやコンディションなどを含めて、(岡田監督には)メンバーにまだ迷いがあるようでした。そしてその後、イングランドに負けて、コートジボワールにも負けて、僕はこのままじゃあ、正直きついなって思っていた。

 でも、(コートジボワール戦後に)岡田さんの部屋で話をしたときは、(岡田監督自身)いろいろなことが吹っ切れていて、手応えをつかんでいる様子でした。『もう、これでいく』と覚悟を決めていたんだと思います。『やれる!』という自信に満ちあふれていましたね」

 大会前、最後の練習試合となるジンバブエ戦を終えると、その翌日はオフとなった。

「とにかく、休め。ゴルフでも、なんでもいいから、リラックスしろ」

 選手たちに向かってそう言った岡田監督の表情に、川口はこれまでにない余裕を感じた。

 指揮官の自信は、選手たちに伝播していくものだ。

 ひょっとしたら、この大会、イケるかも――。

 南アフリカW杯の初戦となるカメルーン戦の決戦前夜、川口はそう感じていた。

(つづく)

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