南アW杯のメンバー入りは絶望。
そのとき突然、川口能活の携帯が鳴った

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 だが、電話を切ったあと、すぐにさまざまな感情がわいてきた。

「すごくうれしかった反面、『本当に自分でいいのか?』とも思っていました。Jリーグの試合に出て活躍している選手がいる中で、試合にも出ていない自分が選ばれていいのかっていう負い目があったんです。

 それに、まだ正式に(メンバーが)発表されたわけではない。正直、『メンバーが発表されるまで、まだわからない』とも思っていました。自分の中では、半信半疑の状態でした」

 翌日、W杯メンバー23名が発表されて、実際に川口の名前が呼ばれた。

 メンバー発表のテレビ中継を夫人と一緒に自宅で見ていた川口は、正式にメンバー入りが決まって、うれしさが込み上げてきた。「がんばろう!」と、改めて決意を固めた。

 その矢先だった。テレビ画面の向こうの会見場では、川口の選出についての質問が飛んだ。その質問に対して、岡田監督は表情を変えずにこう答えた。

「川口は"第3GK"という難しいポジションだが......」

 岡田監督がそう話した瞬間、川口は身を固くした。

 GKであれば、"第3GK"という位置づけがどういうことなのか、容易に理解できる。3人いるGKの中の3番手。それは、試合に出場する可能性は"ない"に等しいということだ。

「(岡田監督の発言を聞いて)う~ん......正直、悔しかったですね。前日に電話で話をした際には『第3GK』とは言われなかったので......。

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