2018.07.01

南アW杯のメンバー入りは絶望。
そのとき突然、川口能活の携帯が鳴った

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 当時、W杯メンバーのGK枠は、楢崎正剛と川島永嗣がほぼ当確。残り1枠は、2010年1月の鹿児島・指宿キャンプに招集された西川周作が有力、という状況にあった。

 そんななか、川口は前年の負傷以来、開幕したリーグ戦で1試合も出場機会がなく、ベンチ入りさえしていなかった。それでも、W杯メンバー発表直前にプレーできる姿を見せようと、準備を重ねていた。

 そして5月9日、代表メンバー23名が発表される前日、やっと実戦復帰のめどが立った川口は、練習試合に出場する予定だった。その試合には、日本代表の加藤好男GKコーチが視察に訪れ、川口の家族も見に来ることになっていた。しかしその直前、右足の内転筋に張りが出て、試合出場を急きょ回避した。

「『あぁ~、これでW杯(出場)がなくなったな』と思いました。それまで、リーグ戦に1試合も出ていなかったんですが、練習試合でもプレーできるところを見せられれば、少しは可能性が出てくるかな、と思ったんですけど......。(練習試合にも出場できず)これでもう、99.9%(メンバー入りは)ダメだなって思いました」

 練習試合が始まる前、夫人に「試合には出ないから、家に帰る」と連絡した。気持ちが落ち込んで、家にいると落ち着かないため、気持ちを切り替えようと、家族で外食に出掛けた。

 そのとき、川口の携帯電話が鳴った。東京の「03」から始まる発信番号が画面に映し出されていた。川口は「誰だろう?」と思って電話に出た。

「ヨシカツか? 俺だよ」

「え? すみません、誰ですか?」

「俺だよ、岡田だよ」

 日本代表の岡田監督からだった。岡田監督が話を続ける。

「今日、ケガをして(練習試合に)出られなかったようだけど、調子はどうだ?」