乾、長友、原口、酒井宏。サイドの奮闘で
日本は「戦える集団」になった

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 しかし、チャンスを決め切れないと、往々にして流れが相手に移るものだ。71分だった。ペナルティエリアで柴崎の守備強度が低く、相手を離してしまい、ファーサイドまでクロスを上げられる。これをムサ・ワゲに押し込まれてしまい、再び逆転された。

 隙をつかれた格好だが、それでも日本の選手たちは下を向かなかった。

 サイドでの主導権を渡さなかったことが、よりどころになった。左サイドの乾の存在はディフェンス面でも大きかった。守備の立ち位置がよく、長友と連動。相手のよさを殺し、自らのよさを生かしていた。右サイドの原口も、ミスはあったものの、酒井宏樹と連携しながら、90分間を通してディフェンスの強度が高かった。

 そして中央では長谷部がバランスをとっている。柴崎の攻撃センスを生かし、香川、大迫との連携を密にすることで、相手を容易に最終ラインまでこさせなかった。昌子源、吉田麻也のセンターバックも一歩も引いていない。

 各ラインでの守備が頑強になったことで、ボールを持ったときに自信を持って前にいけた。安定と強気こそが、このチームの強さになっているのだろう。

「6カ月勝てず、"おっさん、おっさん"と批判され、そこから這い上がった。強い気持ちがみなぎっていますね。試合前から、ロッカールームで『1点獲られることもあるだろうけど、頭はポジティブに戦おう』と話していました。だから失点しても少しもナーバスにならなかった。まだ時間あるよって。メンタル的にブレなかった」(長友)

 そして78分。大迫が右サイドから上げたクロスに、交代出場の岡崎慎司が飛び込む。ボールはファーに流れたが、それをタッチラインで拾った乾が、再び中へ流し込む。またも岡崎が潰れる形となり、その裏で、やはり交代出場の本田圭佑が左足でゴールに突き刺した。

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