2006年ドイツW杯、中村俊輔が明かす「俺が輝けなかった」理由 (3ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun
  • photo by AP/AFLO

 そうした評価とは裏腹に、中村は自らの感覚的には「悪くない」と思っていた。

「俺自身は『なんでそこまで言われるのかなぁ』『わりとやれているじゃん』って思っていた。ただ、結果が出なかったからね。

 やっぱりチームが勝てなかったのは、自分の責任。それは、周囲から言われたからではなく、"10番"ってそういうものだし、その責任は重く受け止めていた。チームを勝たせる責任が"10番"の選手にはあるし、俺を信用してくれたジーコに『もっといい思いをさせてあげたかったなぁ』って思った」

 中村は、大会前と大会中、2度風邪を引いて発熱もあった。クロアチア戦の前は点滴を打って大事には至らなかったが、練習を途中で切り上げているので、かなり厳しい状況にあったのだろう。思うようなパフォーマンスができなかったのは、左足の親指の爪を割るなどの影響もあったが、発熱のダメージのほうが大きいように見えた。

 しかし、中村はそうした見解を否定する。

「確かに風邪を引いて熱が出て、体調も崩した。でも、そこで体力が落ちたとか、それはないよ。点滴を打ってもらって、(体調は)回復していた。試合に出て、90分間プレーしても体力が落ちた実感はなかった。

 俺は、熱があったからとか、風邪を引いたから悪いプレーをしたわけじゃない。(メディアなどでは)そういうことで結論づけされたけど、俺が、みんなが期待するようないいプレーができなかったのは、単純に実力がなかったからだよ」

 冷静な語り口から漏れた言葉は、潔いものだった。

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