阪口夢穂のケガで窮地のなでしこジャパンに「もう1人の阪口」が出現 (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 彼女のゴールに絶対的に必要なものは、ファーストタッチの収まりである。相手を背負いながらのプレーは常に心掛けてきた。その感覚に今、変化が起きつつある。こだわっているのは"50cm"だ。

「今までは自分のプレーしか見えていなかった。今はCBとのわずかな駆け引きを大事にしています」(田中)

 もちろん、これまでも駆け引きがなかったわけではないが、今は意図が明確になっている。

「自分で相手を50cm動かして、その背後を取る。チームでもずっとそれを言われていて、今日はかなり意識してやっていました」(田中)

 少しずつではあるが、それでも確実に表現できつつある。それが2点目、3点目には顕著に表れていた。

 結果的に試合は前半で勝負がついた形になったが、後半開始から登場した人物が気になる動きを連発していた。阪口萌乃(アルビレックス新潟)だ。「緊張はしなかった」という阪口萌乃。ピッチに入る直前に高倉監督から声をかけられ少し笑みを浮かべると、すぐさま表情を引き締めた。

 前線に入り、トップの田中よりやや下がり目に位置取り、つかず離れずの距離感でボールに絡む。ボールを持ちすぎず、はたいて再び走り込む。もちろん他の選手も同じような選択をするのだが、目を引いたのは彼女のポジショニングだった。

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