本田と長友、2人の認識のズレに、「ジーコの失敗」をくり返す予感 (3ページ目)

  • 飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi
  • 川森睦朗●撮影 photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 思い出すのは、2006年ドイツ・ワールドカップで惨敗したジーコジャパンだ。

 ジーコは選手各々のイマジネーションを重視し、比較的自由を許していた。そのため守備戦術などを選手間で話し合うことが多く、ときには意見が衝突し、まとまらないこともあった。本大会初戦のオーストラリア戦ではまさに、小野伸二投入の狙いを共有できず、世紀の大逆転負けを喫してしまう。

 そのジーコジャパンで主将を務めた宮本恒靖がかつて、こんなことを話していた。

「当時はいろんな選手に声をかけながら、その選手のよさを生かしたり、気持ちよくプレーできる環境をつくったりすることが大事だと思っていたんです。でも、そればかりでなく、強いひと言を発する。この瞬間は、俺の言葉を信じてついてきてほしい――そんな訴え方も必要だったと、今では思います。ジーコジャパンに関しては、その反省がすごくあります」

 スイス戦の2日前、本田はこんなことを語っていた。

「(守り方に関する)ふたつのプランが機能しなかった場合も想定しなきゃいけない。そのワーストケースが南アフリカの守備のやり方なんで。全部ダメになっても、あのやり方はできると思っています。全員守備でいくと。攻撃の議論はなしにしようと。それは、最終パターンとしてあると思っています」

 だが、本田がワーストケースと称した南アフリカ・ワールドカップにおける4枚−5枚の守備ブロックも、当時の岡田武史監督が考え抜いて導き出した策であり、一朝一夕でできるものではない。

 西野ジャパンに残されたテストマッチは、パラグアイとの1試合だけ。そのパラグアイ戦でも課題はたくさん出てくるだろう。そのときに西野監督が答えをしっかり提示できず、キャプテンの長谷部もチームをまとめられなければ、ジーコジャパンと同じ命運をたどることになる。

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