W杯直前で完敗を重ねる西野ジャパンに「火事場の馬鹿力」はあるのか (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 しかし、チャンス不足は選手の問題というより、1人ではなく3人、4人が関わるグループの問題だ。監督の指導力と密接に関係する。それを選手個人の問題にする姿勢はまさに保身。監督がこの禁句を吐いている限り、決定力不足は永遠に解決しない。

 そうはいっても、西野式4-2-3-1は、ハリル式4-2-3-1より見栄えがいい。変に蹴らず、繋ごうとする姿勢は、アギーレジャパン、ザックジャパン時代に戻った印象だ。もちろん、ガーナ戦で試した3-4-2-1をも大きく上回る。

 中心になっていたのは大島僚太だ。この選手にボールが集まることで高まる安心感が、チーム全体に波及している格好だ。前任監督から可哀想な扱いを受けていた選手が、監督交代を機に活躍する例は数多いが、大島はそのひとりになる。大島を起用したほうが日本の魅力は発揮される。監督交代をしてよかった点を述べよと言われれば、これになる。

 だが、番狂わせを起こそうという勢いには欠ける。最終的に守備的(3-4-2-1)なのか、攻撃的(4-2-3-1)にいくのか、踏ん切りがついていないことに加え、ベテラン重視の選手起用も、勢いをもたらさない原因だ。

 たとえば本田圭佑。この日、起用された1トップ下は、言ってみれば花形ポジションだ。その席に本田は、ザックジャパン時代以来、ほぼ4年ぶりに座った。しかし華は失われていた。一般的に選手寿命は伸びていて、もうすぐ32歳になる選手でも、衰えを感じさせない選手は確かに存在する。

 だが、現在の本田を見て、なんて若々しいプレーをするんだと驚かされることはない。伸びきったゴムを連想させる弾けなさそうなムード。その右肩下がりは顕著だ。

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