W杯メンバー23名に思う。強豪国から、ボールは誰がどこで奪うのか (4ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 しかし、西野監督は真ん中に固執する。真ん中まずありき。サイドは二の次。真ん中あってのサイドとの考え方を示す。3-4-2-1なる布陣の採用にもそれは表れている。この布陣におけるサイドアタッカーは両サイド各1人のみ。両サイドで数的不利に陥るので、クロスを上げようにも、ゴールライン深くに進入していきにくい。その結果、後方からプラスの度合いがきつい低レベルの象徴というべき「放り込み」をせざるを得なくなる。

 同じ3バックでもアギーレが実践した4-3-3からの可変式3-4-3、中盤フラット型3-4-3、あるいは中盤ダイヤモンド型3-4-3(バルセロナ、アヤックス、マンチェスター・シティ)とは、その点で大きな開きがある。

 サイドの協力があまり得られないなか、強者から厳しいプレッシャーを浴びながらゲームを作らなければならないのは中盤選手だ。

 ガーナ戦の大島僚太は及第点のプレーを見せた。西野監督もメンバー発表会見の席で「センターでボールをよく動かしていた」と評していた。期待を寄せる選手であることが伝わってきた。こちらもそれについては同感だ。

 ボール操作術に関しては大島が、現在の日本ではナンバーワンだと思う。大島と同学年で、ガーナ戦に交代出場を果たした柴崎岳も、大島同様、技術系。両者がピッチに立てば、そのパス交換に期待が募る。

 しかし、そのボールは誰がどこでどうやって奪うのか。西野監督には、相手ボール時の言及がない。ボールを奪う位置について、奪われる位置についての言及もない。発せられるのはマイボール時の話ばかり。W杯本番では強者と3試合戦うというのに、とても楽観的に聞こえる。5バックで守ればそれでオッケーと言わんばかりだ。

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