W杯メンバー23名に思う。強豪国から、ボールは誰がどこで奪うのか (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

「強い相手に対応するために、3(バック)も4(バック)も5(バック)もできるようにしておきたい」と言われれば、もっともらしく聞こえるが、その対応方法は、けっして今日のスタンダードではない。ジーコジャパン時代(いや加茂ジャパンぐらいかもしれない)に逆戻りしたような前時代的発想だ。

 強者を相手にしたとき後ろに下がって守れば、ボールを奪う位置は必然的に低く(後方に)なる。そこから繋いで前に出ようとすれば、相手のプレスを長時間浴び続けることになる。数的不利な状況に陥るサイドが使いにくいとなれば、真ん中のルートを進むことになる。逆に危ないのだ。

 低い(自軍ゴールに近い)位置、しかもサイドより自軍ゴールが近い真ん中付近でボールを失えば、大ピンチ到来。失点の危機だ。それを恐れれば、ハリルジャパンのように、大きく縦に蹴り込まざるを得なくなる。

 ところが西野監督は、後ろで守ることを辞さない一方で「中盤」も大切にしようとする。

「中盤の攻守で主導権を取れるか。中盤でボールを動かし、保持することができれば、当然サイドアタックの回数も増えていくはずだ」と、「中盤」を強調した。真ん中を支配すればゲームが作れるとの考え方を示した。

 だが、後ろで守れば、中盤は作れない。対応力と称する守備的サッカーを重視するのか。中盤サッカーを重視するのか。2つを同時に叶えることはできない。

 繰り返すが、西野式の対応で強者に向かえば5バックになる。相手に両サイドを制されることになる。サイドは真ん中に比べ、プレスがかかりにくいので、相手のボール支配率は上昇する。ゲーム支配を許すことになる。「中盤を制するものは試合を制す」とは、サッカーの格言のひとつだが、プレッシング全盛の現代、それは「サイドを制するものは試合を制す」に変化した。

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