なでしこ、W杯出場へ計算された
オーストラリア戦。「決着は決勝で」

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 女子アジアカップ・グループリーグ最終戦で日本はオーストラリアと1-1のドローとなり、勝ち点5で3チームが並ぶ大混戦になった。最終的には総得点でわずかに1点だけ韓国を上回り、日本が2位で準決勝進出と2019年に開催されるワールドカップ出場を決めた。

高倉ジャパンで貴重な初得点を挙げた阪口夢穂(中央)高倉ジャパンで貴重な初得点を挙げた阪口夢穂(中央) 全員で引き受けた苦しみだった。

「前半をゼロでしのぐ。どれだけ下がる時間帯があっても、引きっぱなしにはしない」――。

 隙あらば前を伺おうとする守備陣からも、その想いは見て取れた。

 今大会、初スタメンとなったボランチの宇津木瑠美(シアトル・レイン)は、最初から球離れを早くすることを決めていた。サイドハーフの長谷川唯(日テレ・ベレーザ)が瞬時に囲まれて行き場をなくすのを見ると、彼女に出すパスをより早いタイミングにして、ボールでそのメッセージを伝えた。「オーストラリアのような相手では、いつものタイミングでは食われて、そこからカウンターにつながってしまう。それだけは避けたかった」と宇津木はその意図を明かす。

 一方、ペアを組んだ阪口夢穂(日テレ・ベレーザ)はリズムが掴みにくそうだった。その要因は、真ん中に陣取るオーストラリアの攻守の要、エミリー・ヴァンエグモンドへの対処法で揺れていたからだ。

 最初は下がり気味にポジションを取った阪口だが、相手を捕まえる距離感を見つけられず、攻守ともに中途半端な対応になっていた。阪口は「大事なところでパスミスが目立ってしまった」と反省しきりだったが、途中からヴァンエグモンドのケアを宇津木にも預け、前目に出たことで徐々にボールが動き始めた。

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