ハリル解任会見での違和感。なぜ「目指すサッカー」は語られないのか (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki photo by JFA/AFLO

 マリ戦、ウクライナ戦後、それは決定的なものになった。残り2カ月の段階で監督交代に踏み切った一番の理由だと田嶋会長は述べたが、それはかなり都合のいい話に聞こえる。解任の遅れをカモフラージュする方便のように聞こえる。マリ戦、ウクライナ戦の前に決断できたはずなのだ。

 昨年12月の東アジアE-1選手権で、北朝鮮、中国に苦戦。そして韓国に1-4で敗れた段階で、実行するべきだった。この段階ならば、西野朗さんの内部昇格以外にも道は残されていた。代理や代行ではない、本格的な名のある人物を招聘できたはずだ。田嶋会長も会見で、「名を明かすことはできないが、実際に候補者はいた」と述べている。

 そのチャンスの芽を摘んだのは協会自身だ。マリ戦、ウクライナ戦を経て事態が改善されなければ、残された道は内部昇格しかない......との判断は、昨年12月の時点で下されていたわけで、それは強力な監督の招聘を、そのときすでに断念していたことの証になる。いま断念したわけではないのだ。

 そもそも田嶋会長、西野技術委員長にまつわる不安は、監督探しにあった。

 アルベルト・ザッケローニ、ハビエル・アギーレ、ヴァイッド・ハリルホジッチの3人は、原博実前専務理事(現Jリーグ副理事長)と霜田正浩前技術委員長(現レノファ山口監督)のコンビで見つけ出してきた監督だ。「攻撃的サッカー」という原さんが好むコンセプトに基づき、招聘された監督だ。

 日本代表監督探しは、それまで代々、身近なところから選ばれてきた。岡田武史、ジーコ、イビチャ・オシム。その前のフィリップ・トルシエは、アーセン・ベンゲル経由で辿り着いた人物とされるが、ひとつのサッカーのコンセプトに基づいて監督探しを始めたのは、原さんが初めてだった。

2 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る