福田正博はW杯に希望がほしい。「個の力より、組織力を高めてくれ」 (3ページ目)

  • 津金壱郎●構成 text by Tsugane Ichiro
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 ただし、堅守速攻で相手を圧倒するためには強いフィジカルが不可欠だ。以前より日本代表の個の力は伸びたかもしれないが、まだ強豪国と互角に戦えるレベルではない。そして、体格に恵まれているとはいえない日本人に適した戦術を模索することなく、消化不良な試合が続いたことで、選手たちにやや混乱が生じているように見える。

 マリ戦、ウクライナ戦の後、「監督のやりたいサッカーをしているだけではダメだ」と口にする選手もいた。つまり、監督が「ボールを奪ってから縦に素早い攻撃」を志向しているとしても、状況によってはボールをつなぐ必要があるということだろう。これは、もっともなことではあるが、W杯まで残り約2カ月半のこの時点で出てくるような言葉ではない。

 一方で、自分のプレーの出来についてのコメントに終始する選手もいた。誰もが「W杯に出場したい」と考えていて、そのチャンスをモノにしようとするのは当然のことだろう。監督の指示をどれだけ全うできたかに重きを置き、自身の収穫と課題を分析したくなる気持ちもわかる。

 しかし、W杯本番を目前に控えたこの時期は、本来、選手たちの目標や意識はすでに統一されているべきで、W杯の戦いがどれだけ難しいかを身をもって知っている長谷部や本田圭佑らは、自らのプレーについてポジティブなコメントを一切しなかった。

 W杯でのグループリーグ突破を目指すならば、「W杯に出場しないウクライナ代表やマリ代表に圧倒されているようでは話にならない」という強い危機感があるのだろう。

 今回の欧州遠征での収穫を挙げるとすれば、「個の力で世界に挑んでも世界に通用しないことがはっきりしたこと」だ。その追い込まれた状況が、「組織力を高めていく」という意識でチームがまとまるきっかけになるかもしれない。

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