だから言ったのに...。ハリルの
無計画な選手起用、これでは勝てない

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 しかしハリルホジッチは、目先の安定感欲しさにそれを怠った。長谷部を最終ラインで起用するテストも行なっていない。日本の問題は数あれど、一番は中心選手が中心選手らしいプレーを発揮できそうもない点にある。

 この日、守備的MFとして長谷部とともに先発を飾った大島僚太は、「司令塔」の有力な候補になる。だが、彼が日本代表でプレーした時間はこれまでわずか105分。2試合のみだ。その彼を、ハリルホジッチは試合前、「我々が追跡し始めた頃とは、見違えるほどよくなっている」と、持ち上げた。

 だが、それは真実だろうか。それならばなぜ、ハリルホジッチはW杯アジア最終予選の初戦、UAE戦に、大島を先発メンバーに送り込んだのか。予選の大一番に、初代表の新人をチームのヘソに起用したのである。当時から期待の選手であったことは疑いようがない。

 大島はそのUAE戦でPKを献上する反則を犯し、メディアから戦犯扱いされた。するとハリルホジッチも、その4試合後からは大島を招集さえしなくなった。Jリーグで以前と変わらぬ活躍をしていたにもかかわらず、育てることを放棄したのだ。目先の勝利ほしさのために。

 それをいまさら重宝がっているのだ。実際、マリ戦の大島は、ボールによく絡んだ。積極的に受けにいき、ビルドアップを試みようとした。だが、川崎Fでのプレーとは大きく違っていた。前へ、前へ、急ごうとしていた。メンバーに残りたければ、監督の指示に従うしかないからだ。

 これは大島に限った話ではない。全選手に言えることだ。球離れが早すぎる。リズムを失った原因はここにあるが、それは言い換えれば、仮想セネガルと同じリズムで戦ってしまったことを意味する。これでは勝てない。

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