なでしこ、最終戦を0封負け。この攻撃力でアジアカップを戦えるのか (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 2失点目も防げたはずのものだった。後半の立ち上がり、クリスティーネ・シンクレアのパスを最終ラインまで入っていた長谷川唯(日テレ・ベレーザ)がカットしてボールは力なく中へ。ここでピンチを切り抜けたかに思われた。GK山下杏也加(日テレ・ベレーザ)もクリアするために走り出していた。

 熊谷もその姿を捉えていたが、自分もいくと「クラッシュしそうだな」と一瞬迷いが生じた。ところが、相手のアシュリー・ローレンスにはその迷いがなく、ボールに突進、熊谷と競りながら懸命に足を伸ばしてボールを押し出した。必死に山下が後を追うも届かず、ボールはゴールへ。「自分の判断が失点を招いた」と悔やむ熊谷。一声あれば何事もなく済んだ場面だった。

「どっちも崩されたわけじゃないし......でも"2"という数字がキツかった」

 阪口夢穂(日テレ・ベレーザ)のこの言葉通り、今の日本には連続失点後に巻き返すだけの逆襲力がない。その言葉に頷きつつも、同義のようで非なるものとして"0"の数字に不安を感じずにはいられなかった。

 6ゴールを失ったオランダ戦ですら、敵陣をえぐった攻撃が多く存在した。内容では守備の崩壊に目が集まったが、攻撃については"決定力不足"と言うことができた。

 ところがカナダ戦は、決定力のはるか手前の話しかできないくらい、フィニッシュに導くパスがほとんど通らなかった。このチームの攻撃を支えているのは多彩な個のカラーと、攻撃陣が繰り出すワンタッチパスで作るリズムだ。そのパスが出せないとは、由々しき事態だった。

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