田中陽子ほか、元ヤングなでしこが、代表に返り咲く一歩を踏み出した (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 これまで動きの中でプレーすることを最優先としてきた田中にとって、一度"止まる"という概念はなかった。これは守備にも通じているという。

「相手に強く(当たりに)行って、そこで止まって相手がかわしてきたときにもう一度素早く動き直す――ここも同じ"止まる"タイミングが重要」

 もちろん、流れを止めないこれまでの彼女のプレーは揺るぎない個性である。そこへ真逆の"止まる"プレーが加われば選択肢は無限に広がる。

「女子では、そういうプレーをする選手はあまりいないので......やるしかないですね!」

 とてつもなく厳しい野望ではあるが、その表情は実に楽しそうだった。

 5日間のメニューで選手たちに衝撃を与えたのが、日程の中盤に組まれたセレッソ大阪ユース(高校1年)とのトレーニングマッチだった。

 フィジカル、戦術、技術すべてにおいて太刀打ちできる相手ではなかったのだが、ワンサイドな展開の中、左サイドから中へ切り込んでシュートまで持っていったのが成宮(なるみや)唯(22歳・ジェフ千葉)だった。このチーム唯一のシュートは、常に自陣で相手の脅威にさらされながら、わずかな隙を突いての攻撃だった。

「(攻撃を)イメージして入ってはいました。でも、パス&コントロールだったり、球際の甘さを痛感しました......」と悔しさを滲ませた成宮。彼女もU-17世代ではチームを牽引する存在だった。サイドからドリブルで侵入して狙いすますシュート――。一連の流れるようなプレーはキレがあり、成宮特有のものだ。U-23世代では高倉麻子監督の指導も受けていたが、なでしこチャレンジの場はそれとは明らかに違うと成宮は言う。

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