韓国を撃破した、なでしこジャパン。意味ある失敗でチームは強くなる (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 この日、周りがバタつく中、自身が欲しがって得たボールを田中が失うことはなかった。欧米国との対戦も重要だが、アジアを制すことなく世界への扉は開かない。自分の技術が有効な相手を知っておくことも必要だ。さらに言えば、これを軸に欧米諸国との対応に変化を加えていけばいい。この試合での感覚をどう発展させていくかが今後の田中自身の課題となる。

 試合内容は理想形には遠く及ばなかったが、何より2度追いつかれる苦しさの中、勝ち切ったことは大きい。後半に投入された中島の2得点に絡む活躍は、まさに指揮官が目指す「誰が出ても戦えるチーム」の片鱗だ。さらに決勝ゴールはヨルダン戦で覚醒の予感を見せていた岩渕が「依美ならシュートを打つと思った」とこぼれ球を狙いすましたものだった。絶大な信頼を得て送り出された者と、ゴールを決めるべき者。ここにも連係は見えた。

 対して守備では大きなトライが行なわれた。「私自身も怖いところはあった」と高倉監督も振り返るように初戦に抜擢したのはフレッシュな面々だった。ヨルダン戦に続き、両サイドバック(SB)に大矢歩(愛媛FC)と万屋を、センターバック(CB)に三宅史織(INAC神戸)、もうひとりのCBに鮫島彩(INAC神戸)という人材が配置された。「もっと(CBを)勉強する時間が欲しい!」と試合前に語っていた鮫島。プレーが止まるのを見計らって、ラインのポジションやプレスのタイミングを話し合う姿が何度も見られた。

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