あのイラン戦、同点弾の城彰二は
「脳震とう」で中盤をウロウロしていた

  • 佐藤 俊●取材・構成 text by Sato Shun
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

――その直後の後半18分、三浦知良選手と中山選手に代わって、呂比須ワグナー選手と一緒に城さんも出場しました。

「ロペ(呂比須)が(交代の)ファーストチョイスなのはいつもどおり。ただ、彼が呼ばれたときにベンチがざわついた。何だろうと思ったら、『城も一緒だ』っていきなり言われて......。『ウソだろ』と思ったんですけど、本当に出ることになって。だから、あのときカズさんが『オレも?』って反応したのはよくわかる。

 あの予選のあと、しばらくして岡田さんに『なんで、あのときFW2枚を一気に代えたんですか?』って聞いたんですけど、岡田さんは『わからない』って言うですよ(笑)。『ロペの交代は覚えているけど、おまえを一緒に代えるつもりはなかった』って。『でも、パッと(城も)呼ばないといけないと思った』と。それぐらい、選手も、ベンチもテンパっていたというか、あのときはみんな、極限状態の中で戦っていたんだと思います」

――結果的には、あの交代策によって、城さんの同点ゴールが生まれました。

「最初、(日本がボールを奪ったとき)前にスペースが空いていると思って、そこを突こうと思ったんだけど、(そのスペースは)オフサイドだった。それで、一度戻って、スピードダウンして止まった。そのとき、ボールを持っていたヒデ(中田英寿)がちょうど顔を上げたので、『あっ(クロスが)来るな』と思って動き直したんですけど、正直、(ゴールを)決める自信はなかったですね。

 実は俺、左サイドから来るボールが苦手なんですよ。左サイドから来るボールに対しては右足でジャンプするんだけど、それだと30cmくらいしか飛べない。右からのクロスだったら、左足でジャンプするから1mくらいは飛べるんだけどね。だから、あのときは『せぇ~の』って感じで、両足で飛んだんですよ」

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