ハリルよ、あなたは限界だ。
ベルギーと10回やっても1度も勝てない

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

 当たり前すぎる凡庸な交代。弱者を率いる監督に不可欠な工夫はゼロだった。格上相手に、ただ、漠然と交代選手を送り出しただけ。これでは番狂わせは起こせない。交代を機に布陣をいじる(4-4-2とか4-3-3に)こともできたはずだ。やるだけのことをやったにもかかわらず試合が動かなかったのなら納得する。万策尽きた末の敗戦なら、仕方ないと諦めもつく。

 メンバーに限りがあるW杯では、とりわけ戦術的交代は大きな武器になる。

 想起するのは、2002年W杯の韓国対イタリア戦だ。韓国の監督フース・ヒディンクは、3人の交代でピッチ上の計8箇所に変化を発生させた。イタリアの選手は、目の前で対峙する選手が次々と代わっていく現象に明らかに面食らっていた。韓国の勝利は、相手の目をくらますこの作戦が奏功したことと密接な関係がある。

 選手個々の力量が貧弱な場合、問われるのは監督の頭。選手を嘆き、日本のサッカー界を上から目線で揶揄(やゆ)する傾向があるハリルホジッチだが、ベルギー戦はブラジル戦に続き、自分自身の監督力が問われた試合だったのだ。引き出しの中身がどれほど豊富で充実しているか、チェックされる機会だったのだ。

 ハリルホジッチはそれに応えられなかった。手をこまねくばかりで、動かぬ岩を動かそうとする姿勢や工夫を示せなかった。番狂わせを狙う監督に不可欠な素養の持ち主でないことを露呈する結果になった。サッカーが退屈に見えた大きな原因だ。もっと才気溢れる監督でないと、日本代表の監督は務まらない。ベルギー戦はブラジル戦に引き続き、ハリルホジッチの限界が露わになった一戦になる。

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