なでしこジャパン異色の29歳、櫨(はじ)まどかは攻撃の要となるか (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 時折スイスのカウンターに苦しめながらも鮫島彩(INAC神戸)の右サイドバック、熊谷紗希(リヨン)、宇津木瑠美(シアトル)のセンターバックに、7月のアメリカ遠征に続き左サイドバックに抜擢された万屋美穂(ベガルタ仙台L)の最終ラインが踏ん張り、日本が完封勝利をおさめた。

 面白い存在になりつつあるのが櫨だ。アメリカ遠征で初招集された遅咲きの29歳。現在のなでしこ攻撃陣は小柄でスピーディな選手が多い中、明らかに毛色が異なるのがこの櫨という存在だ。決してキレ味抜群というわけではない。しかし、彼女には独特の間合いがある。繰り出されるパス、粘りあるボールキープ、もちろんシュート力も申し分ない。彼女にボールが入ると、いつものように多くの選手は一気にスピードアップして前線でボールを受けようとする。必然的に彼女の周りに空間が広がる。相手にとってバイタル手前の嫌な位置にいるにも関わらず、比較的自由にボールを持つことができるのだ。

「周りが動いてくれますから......ラッキーなんです(笑)」

 その能力を試したいと、高倉麻子監督から、長野に入って数ヵ所のポジションを与えられ、所属チームではまず担うことのないサイドに果敢にトライした。

 意外だったのは「守備の時間が長いと感じました」という試合後のひと言。合点がいったのは、彼女のその意識の先にある阪口夢穂(日テレ・ベレーザ)の存在だった。阪口は攻撃のスイッチャー。彼女が高い位置にいれば日本は優位に立てるが、このところパスミスからカウンターでやられることが多く、阪口はポジションを低くせざるを得ない。ピンチに危険エリアを察知する能力があるがゆえの"引き"であり、阪口の読みで日本は幾度となくピンチを切り抜けてきた。この試合では、阪口が"掃除"をして回る際に生じるスペースを櫨がフォローする動きを見せていた。この動きが櫨の"守備意識"につながっているというわけだ。

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