水をかけられ、バッシングを浴びた城彰二を救った「カズの言葉」 (4ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun

 カズの言葉によって、W杯でのことは城の気持ちの中では吹っ切ることができたが、空港で水をかけられたあとも、実は城の周辺ではいろいろな"事件"が起きていた。

 城のマネジャーが乗るワンボックスカーが放火されたり、自宅マンションの壁などに落書きをされたりした。警察に連絡すると、護衛が必要だということになって、城とマネジャーには警察官の護衛がついた。

 そんな城の自宅にはメディアも連日張りついていた。そのため、城はしばらく自宅を離れて、ホテルを転々として暮らしていた。

 W杯3連敗の"A級戦犯"につるし上げられたため、通常では考えられないようなことが、城の周りでは起きていたのである。

「正直、殺されないだけマシかなって思っていた。マネジャーの車とか燃やされたけど、海外じゃあ、オウンゴールした選手が殺されたりするわけじゃない。本来、そういうことはあってはいけないことなんだけど、そのぐらい(サッカーに対して)みんな、熱かったということなんだろうね......」

 その後、あるテレビ局が「ガムを噛むことで、力が抜けていいプレーができる」という検証番組を放送した。ガムの効能を示してくれたことで、それ以降、過激な嫌がらせは少なくなっていった。

 また、城のプレー態度などについてテレビで強烈に批判したあの選手が、「こんなことになって済まなかった」と城に謝罪した。世間の城に対するバッシングに油を注いだ張本人だが、城は「もう終わったこと」と何ら咎(とが)めることなく、水に流した。

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