惨敗のW杯、日本代表へのバッシングが、
なぜ城彰二に集中したのか?

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

私が語る「日本サッカー、あの事件の真相」第2回
W杯3連敗。成田空港「水かけ事件」~城 彰二(2)

(1)『日本が初出場したW杯。帰国した城彰二を襲った「あの事件」に迫る』から読む>


 日本が初めてW杯に出場した1998年フランス大会。初戦のアルゼンチン戦、2戦目のクロアチア戦と、いずれも日本は0-1で敗れた。その結果、グループリーグ敗退は早々に決まってしまったが、「3連敗で帰国するわけにはいかない」と日本代表の誰もがそう思っていた。とりわけ、"エース"の城彰二はその思いが人一倍強かった。

 3戦目のジャマイカ戦(6月26日)には悲壮な覚悟を持って臨んだ。

 クロアチア戦で右膝を負傷し、20分しか効かない痛み止めを打って試合に出場した城。過去2戦よりも積極的に仕掛け、意欲的にシュートを放っていく姿勢も見られた。

 最初のチャンスは前半20分に訪れた。中田英寿からのクロスをファーサイドで受けた城はダイレクトでボレーシュートを放った。ボールはしっかりとらえていたが、惜しくも右に外れた。

 前半37分には、名波浩の右サイドからのクロスをファーサイドの相馬直樹が頭で折り返し、ゴール前でフリーだった城がそのボールを受けた。胸で落としてすかさずシュートを放つが、ボールは相手DFに当たってゴールの上を大きく越えていった。その瞬間、大勢の日本人ファンで埋まっていたスタンドの歓声が悲鳴に変わった。

 何やってんだよ――そんな呪詛(じゅそ)が漏れるような危うい空気が、このときからスタジアム内に充満し始めていた。

「何がなんでも結果を出す」

 その思いだけで、城は後半も志願して出場した。

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