賞賛ムード、続投決定の今だからこそ、
ハリルでいいかを真剣に考える

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 翻(ひるがえ)って、日本はどうか。

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の就任以後、日本代表が取り組んできたのは、徹底して相手のよさを封じるサッカーだ。

 まずは相手の長所を消して、ボールを奪うことを最優先事項とし、奪ったボールは手数をかけず、シンプルにどんどん前線へと送って縦に速く攻める。この試合でも、最前線のFW大迫勇也をターゲットに、再三ロングボールが蹴り込まれた。

 勝負という点では、オーストラリアより日本のほうがはるかに利口であり、融通が利いたと言える。勝ってW杯出場を決めたのは、日本のほうだ。2次予選、最終予選を通じ、もたつきも多々あったが、ハリルホジッチ監督は試合ごとに自らが信じる策を講じ、相応の結果を出したわけだ。

 だが、本当にこれでいいのだろうか。

 振り返れば、日本代表がブラジルW杯で惨敗したことで、日本サッカー協会は、サポーターは、そしてメディアは、思いのほか大きなショックを受けた(ように感じる)。そして、不意に襲ってきたショックはネガティブなエネルギーとなって、日本代表が志向してきたポゼッションサッカーへと向けられた。こんなサッカーを、スペインならともかく、日本ができるわけがない。土台無理があったんだ、と。

 ハリルホジッチ監督の招聘は、それまで高まり続けたポゼッション信仰の反動によるものだったと言ってもいい。

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