シアトルの川澄奈穂美に聞く、ホンモノの「縦に速いサッカー」とは? (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 3年という月日を経て、川澄はチームに欠かせない存在となっていた。アメリカ代表のスター選手でもあるラピノーとは左右サイドの対極にいながらコンビネーションプレーで互いの好機を作り合う。トップのセンターにいるのはINACでもプレーしていたべヴァリー・ヤネズ。川澄のクロスに合わせる際、自身の得意とするニアコースをケアするヤネズの動きを見ていれば、その信頼関係は一目瞭然だ。

 まだまだ、アメリカの地で自身の伸びしろを感じるという川澄奈穂美 まだまだ、アメリカの地で自身の伸びしろを感じるという川澄奈穂美 ケガ人を抱えたチームは最終ライン、中盤に若い選手を起用することも多く、「レインの選手はまだ試合の流れを読む力が薄いと思うので、状況判断ができていなかったり、今どういうプレーが必要なのか、ボールを落ち着かせるのか、相手を裏返した方がいいのか、そういう判断は自分の中で大事にしています」と話す。

 こういうところは日本でのプレーとなんら変わるところはない。

「自分のよさをここで出せなければ、生き残っていくことはできません。だから土台は変わることはありません」

 その上で、アメリカだから"選択"するプレーも出てくる。そのひとつが彼女の全力ダッシュ。日本であれば、そこまでのスピードを出さなくてもパスに追いつくことができるが、レインでは100%出し切ってようやく追いつく。右サイドの川澄がいつも余裕を持ってプレーしているように見えるのは、ボールを受け取ることができる場所を見極める目と、そのポジションへの全力ダッシュの賜物だ。時には最終ラインまで下がって守備をし、次の場面では最前線でボールに絡む。まるで新人選手であるかのようにピッチを駆け回っている。

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