櫨まどかの活躍だけが光明。「これがなでしこ!」という攻撃の軸を作れ (4ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 1分2敗――対戦相手の実力を考えれば妥当なラインではあるが、その想定範囲を打ち破るプレーというものは少なかった。3ゴール8失点――数字が示す通り失点が多すぎるが、守備については選手が揃い、距離感を整えることである程度までは落ち着かせることは可能だろう。

 失点の場面は元をたどれば、攻撃に転じている際の奪われ方に起因している。問題はやはり攻撃にある。パスの長短、弱さ、トラップ、そのわずかなズレを相手は狙っている。相手がアメリカともなれば、そこから一気にゴール前まで運ばれ、切り替えが同じスタートでは間に合うはずもない。パスの精度を確実に上げていかなければ、返り討ちの失点を減らすことは難しいだろう。

 ここからは、本格的に"なでしこジャパンの攻撃"の色を作っていかなければならない。アメリカやオーストラリアは相手のミスを確実に得点につなげることができ、日本はそれができない。決定力の差はこの部分だけでも歴然としていた。

「いい形を作った場面もありますが、結局フィニッシュを取ることができない。シュートが弱い。身体がブレる。そこはインターナショナルマッチで戦えるレベルではないなと思います」とは高倉監督。個のレベルアップは今までもこれからも求められ続ける。それだけでなく、何かひとつ、これが"このなでしこジャパンのプレーだ"という軸が欲しい。それを体感できれば選手たちの中にあるそれぞれのイメージが統一されていくはずだ。来年に控えたFIFA女子ワールドカップ予選へ向けて、指揮官の"選択"と"落とし込み"の時期に入るが、生みの苦しみはもうしばらく続きそうだ。

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