なでしこ、オーストラリア戦の教訓「パスは止めず、トトンと動かす」 (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 彼女が右サイドで最終ラインからのロングフィードを受けた際、走りながら右足のインサイドでボールを侵入経路の延長線上にスピードを保ったまま送り出し、ゴールをアシストするクロスにつなげるのだが、ラソのケアに入っていた北川を一発で置き去りにしたそのワンタッチが決まった時点で、もう日本の失点は免れなかった。こうしたスピードを落とさずファーストタッチでフェイクも兼ねてしまうプレーは、本来であれば日本が十八番にすべき類(たぐい)のものだ。

 ポイントは"動きながら"ということ。日本のパスは受けるときも離すときも、かなりの確率で足元で止めてしまうため、単調なリズムに陥りやすい。今大会でそこを意識していたのが籾木だ。ここまで、いずれも途中出場ながら2得点を挙げている。

「トントンじゃなくて、トトンのリズムでボールを動かすんです」――この数カ月、なでしこジャパンで揉まれながら、体得した流れを生み出す籾木流の秘訣である。

 実際に、彼女がそのリズムで攻撃に絡むとき、"動きながら"受け取り、2タッチほどでボールを手放している。そこからさらに一歩バージョンアップしたのがこの日のロスタイムのゴールだった。

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