「CB鮫島彩」で強豪国に挑む、なでしこジャパンの攻守に必要なもの (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 ただ、失点の場面は「今まで(受けた中)で一番強烈だった」と山下。カミラのミドルシュートにわずかながら触っていただけに、やはりそこでもうひと粘り欲しかった。カミラにボールが入る前のクリアのあと、山下の体勢の立て直しが一瞬遅れた。好調だったこの日の山下だからこそ、超えられる壁だったのではないか。あの空気間の中で一段上の感覚を掴めるチャンスでもあった。

 守備の要であり、キャプテンの熊谷紗希(リヨン)の招集が叶わず、今年に入って代表CBの実績を重ねてきた中村楓(新潟)がケガで辞退と、決して万全の体制ではなかった守備陣。結果、ブラジル戦の最終ラインは、DF裏への対応力を買われた左サイドバックのスペシャリストである鮫島を市瀬とともにCBへ起用した。初めて試されたのは試合のわずか2日前の紅白戦。右往左往しながらも鮫島はこう決意していた。

「すべてが完璧にできるはずもない。ならば、できることを確実に。両隣のカバーと、背を向けているFWは潰す!」

 侵入コースを限定し、時折最終ラインに入ってカバーを見せる宇津木と、前線からのプレスに助けられながら、鮫島はCBをやり遂げた。経験値を差し引けば、この日の最終ラインはできる限りのプレーをしたと言える。

 しかし、攻撃にまで手が及ばなかったことも事実。これまでは熊谷、市瀬らが攻撃の起点を担っている場面も多かった。ブラジル戦は縦に収める展開が生まれず、攻撃は個に託される形になった。

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