結果オーライの引き分けの中、イタリアを翻弄した堂安律はスゴかった (5ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • スエイシナオヨシ、佐野美樹●撮影 photo by Sueishi Naoyoshi,Sano Miki

 ともに勝ち点3でグループリーグ最終戦を迎えた両チームは、引き分けで勝ち点1ずつを加えれば、イタリアは2位で、日本は3位でグループリーグ突破が決まる状況にあった(日本は2点以上を取っての引き分けであれば、その時点で3位チームのなかでの成績上位4カ国に入ることが決まっていた)。

 ここから下手に打ち合って負けてしまっては、グループリーグ敗退が濃厚になる。そんなリスクを負うくらいなら、引き分けで十分。そうした思惑はどちらにも共通するものだった。とりわけ、引き分けでも2位通過が決まるイタリアにしてみれば、日本が3位通過を納得づくで引き分けという結果を受け入れてくれるなら、異論があるはずもなかった。堂安が振り返る。

「2点先制されたのを追いついて、体力的にもキツかったし、攻める気力もあまり残っていなかった。勝てれば最高だったが、相手もボールを回していた(攻めてこなかった)んで、無理に取りにいってはがされて、(失点して)負ければ何もなかった。これも戦術のひとつかなと思う」

 はたして試合は、どちらから提案したともなく暗黙の了解のもと、無理には攻めず、無理にはボールを奪いにいかずの展開で、残り時間を費やした。

 特にアディショナルタイムを含めた、最後の10分ほどはまったく動きがなくなり、ただただ時間が過ぎるのを待つだけの展開に、スタンドからはブーイングも起きた。さすがにこれほど極端な展開は、選手も「もちろん初めて」(市丸)だったが、世界の常識に照らせば「これもサッカー」(市丸)である。

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