UAE戦の勝因は謙虚なプレーと今野泰幸。日本代表にスターは不要だ (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

 UAEの何人かは、日本人より上と言いたくなる多彩な個人技の持ち主だ。2015年アジア杯では日本にPK戦勝ち。このアジア最終予選の開幕ゲームでも2-1で勝利している。さぞ個人技に自信を深めていたに違いない。今回も、ワザでねじ伏せてやる。そんな過信を感じた。エースのオマール・アブドゥルラーマンのプレーぶり、とりわけポジショニングに、である。

 4-2-3-1の3の右。であるにもかかわらず、半分以上の時間、彼はそこにいなかった。高度な技術を披露したかったのだろう。真ん中に入り込み(悪く言えば好き勝手に動き)、アタッカーというよりゲームメーカー的な振る舞いをした。攻撃のバランスはそれによって崩れた。いるべきところに人がいない。パス回しに円滑さを欠いた。

 日本にとって怖かったのは、アブドゥルラーマンに高い位置でプレーされることだ。高度な技術を日本ゴールに近い場所で発揮されれば決定的なピンチに繋がるが、パスの出し役にとどまるなら、巧さは発揮されても怖さは減退する。

 一方、日本のサッカーは謙虚だった。UAEとの過去2戦は、「巧い選手は巧い選手に弱い」というサッカーの格言を地でいくような戦いをした。相手に高い個人技を発揮されて焦った。"巧さ比べ"では自分たちの方が上と余裕をもって構えたら、試合が始まると相手の技巧に翻弄され、「マズい。こんなハズではなかった」と泡を食い、半ばパニックに陥った。

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