永里姉妹がお互いを語る。「W杯エクアドル戦は姉として妹をフォローした」 (6ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

――姉の気持ちが心に響いちゃったんです、きっと。

優季 引退しようって心に決めていたんだけど、私には怖くて言えなかったと思う。それを受け入れてくれるのかどうかっていうのは不安だったと思うし。家族に言うことすらも躊躇してたところはあったから。

――なんだかんだ言っても天才は天才なりに、いろんなことを確実に乗り越えている姉を見て、そこに並びたいと思ってがんばってきた数年があって、優季選手に伝えるのが何よりも怖かったのかもしれませんね。......ここにいない体で話してますけど(笑)。

亜紗乃 ......引退、したくなくて......でも毎日、めちゃくちゃ膝は痛くて......でやっぱり一番近くにいたから、怖いっていうよりは言いたくない。これ言ったら本当に"引退"だって。お姉ちゃんに言うのが最後の......。

優季 私に言ったら、もう本当にサッカーができなくなるんだって思ったってことだね。

亜紗乃 うん。

――そこに至るまでの気持ちがわかるだけに、もう何も言えなかった?

優季 そう。やめてほしいっていう気持ちと続けてほしいって気持ちがやっぱり両方あったから......。ワールドカップでのあの15分が最後になるとは思ってなかった。でもあそこで最後に同じピッチに立てたことはよかった。それがないまま終わっていたら、きっとかなりの心残りがあって、やめる決断がもっとできなかったかもしれないですよね。

 自分に厳しいことで知られる"永里優季"が妹の成長のために封じていた姉の顔。そばにはいつも幼い頃からの"天才肌・亜紗乃"という妹の存在があった。互いに対するリスペクトを持って、さらに2人だけに理解できる"テレパシー"があるのだと2人は笑う。独特のバランスを見ていて、この姉妹だからこその距離感で乗り越えた日々に改めて想いを馳せた。

(後半に続く)

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